今年のノーベル化学賞の受賞内容は「金属有機構造体の開発」です。この、有機金属構造体について簡単に説明していきたいと思います。
赤駒
すべての物質は原子からできています。小さな原子が結合することによってさまざまな物質を構成します。原子の形は球体であると考えることができるため、球体同士がどんなに密に詰まったとしても必ず小さな「隙間」ができます。通常の固体ではこの隙間はとても小さい物ですので、その隙間に何か入ることはできません。しかし、この隙間を大きくすることができたらどうでしょうか。隙間を大きくすることによって、化学物質をその隙間にしまい込み、貯蔵することが可能となります。それを可能としたのが、金属有機構造体です。
緑駒
皆さん、炭を利用した脱臭剤はご存知ですか。炭の固体には多くの隙間があり、その隙間に臭いの原因となる物質を吸着することによって脱臭をしています。このような、多くの隙間を持った固体は多く存在しますが、隙間の大きさをコントロールし、安定的に保存させることはとても難しいです。金属有機構造体では、有機化合物と金属イオンを駆使して、狙った大きさの隙間を作る上に、安定的に保存することが可能となりました。
紫駒
金属有機構造体は気体などの分離、回収、貯蔵を効率化できる技術として世界で研究が加速し、産業応用が広がっている。微細な穴が無数に開いていて1グラムあたりの表面積はサッカーコートに匹敵し、狙った物質を大量にとじ込められます。果物の鮮度維持や半導体製造向けで実用化しているが、今後、期待されるのが脱炭素分野での応用です。工場で出る排ガスや空気が含むCO2を分離・回収できれば、温暖化ガス排出を大幅に減らせます。また、燃料電池の燃料である水素を安全に貯蔵するのにも利用されており、これから更なる研究が行われていくと考えられます。
SCIENCE IS ELEGANT
文理学院中島校高等部理系担当 伴野